小惑星探査機 『はやぶさ2』 を追いかけて
§.はじめに
多くの苦難を乗り越えて 小惑星 「イトカワ」 を探査し資料を収集した初代はやぶさが 満身創痍の機体の最後の力を振り絞って地球に帰還したのが 2010年6月13日でした。まだ明るい16時ごろに内之浦上空を通過して行き、22時51分ごろに大気圏に突入しました。何も見えないであろうことは分かっていましたが、万一思わぬ事態が生じて見えるかも知れないと思い、その日の夕方は待機していましたが、あいにく天気が悪く曇天でした。
この初代はやぶさの活躍は擬人化されて世間の共感を得て映画が3本も作成される人気となりました。このはやぶさ人気の冷めない内(?)に後継の 『はやぶさ2』 が計画され打ち上げられることになりましたが、私としては 「打上時」、「地球スイングバイ時」、「帰還時」 のチャンスに何とか撮影出来ないものかと考えていました。
§.打ち上げ時の撮影計画
打ち上げは昼間に行われることになったので、残念ながら自宅からの撮影は絶望的と思い諦めかけていたのですが、「ひまわり8号」打上げ時の噴煙が昼間に四国から撮影されたことがあるという情報を見つけました。四国から撮影出来るのなら、神奈川県からの撮影の可能性もゼロではないと信じて、JAXAの打上計画書の情報を元にロケットの軌跡を推定してみました。(下図)
多くの苦難を乗り越えて 小惑星 「イトカワ」 を探査し資料を収集した初代はやぶさが 満身創痍の機体の最後の力を振り絞って地球に帰還したのが 2010年6月13日でした。まだ明るい16時ごろに内之浦上空を通過して行き、22時51分ごろに大気圏に突入しました。何も見えないであろうことは分かっていましたが、万一思わぬ事態が生じて見えるかも知れないと思い、その日の夕方は待機していましたが、あいにく天気が悪く曇天でした。
この初代はやぶさの活躍は擬人化されて世間の共感を得て映画が3本も作成される人気となりました。このはやぶさ人気の冷めない内(?)に後継の 『はやぶさ2』 が計画され打ち上げられることになりましたが、私としては 「打上時」、「地球スイングバイ時」、「帰還時」 のチャンスに何とか撮影出来ないものかと考えていました。
§.打ち上げ時の撮影計画
打ち上げは昼間に行われることになったので、残念ながら自宅からの撮影は絶望的と思い諦めかけていたのですが、「ひまわり8号」打上げ時の噴煙が昼間に四国から撮影されたことがあるという情報を見つけました。四国から撮影出来るのなら、神奈川県からの撮影の可能性もゼロではないと信じて、JAXAの打上計画書の情報を元にロケットの軌跡を推定してみました。(下図)
ロケットの飛跡は 太陽の下側(南側)を通過するので逆光になり 非常に不利な撮影条件ではあります。 しかし打上げから 6分36秒後に第一段ロケットの燃焼が停止される直前には飛跡の地上高が最高点(注)に達し太陽からも離れるので この付近が狙い目でしょう。 (注)秦野の場合。
§.打ち上げ時の撮影
実際の打上げは、2014年11月30日13時24分48秒にセットされていましたが、天候不順のために12月1日13時22分43秒に延期されました。さらにこの予定も再延期され、打上げられたのは12月3日の13時22分04秒 でした。 11/30、12/1の両日とも秦野は曇天だったので、この延期は大歓迎でした。そして 12/3 は全く雲が無い快晴の天気となりました。
秦野市北部の 「菜の花台」 という標高551m の高台から撮影する予定にしていたので打上げの1時間前に行きましたが、何故だか立入禁止になっていました。様子を覗うと、どうも 自動車のCM の撮影を実施しているようでした。秦野市の撮影許可が出ているので文句も言えず、といって今更 場所の変更も出来ないので、 『はやぶさ2はここからでないと撮れない。2ヶ月も前から準備してきたので何とか入れて欲しい』 と泣き付いて、CM 撮影の邪魔にならない端っこで三脚やカメラを準備しました。雲ひとつ無い真っ青な空で、コンディションは最高でした。
§.打ち上げ時の撮影
実際の打上げは、2014年11月30日13時24分48秒にセットされていましたが、天候不順のために12月1日13時22分43秒に延期されました。さらにこの予定も再延期され、打上げられたのは12月3日の13時22分04秒 でした。 11/30、12/1の両日とも秦野は曇天だったので、この延期は大歓迎でした。そして 12/3 は全く雲が無い快晴の天気となりました。
秦野市北部の 「菜の花台」 という標高551m の高台から撮影する予定にしていたので打上げの1時間前に行きましたが、何故だか立入禁止になっていました。様子を覗うと、どうも 自動車のCM の撮影を実施しているようでした。秦野市の撮影許可が出ているので文句も言えず、といって今更 場所の変更も出来ないので、 『はやぶさ2はここからでないと撮れない。2ヶ月も前から準備してきたので何とか入れて欲しい』 と泣き付いて、CM 撮影の邪魔にならない端っこで三脚やカメラを準備しました。雲ひとつ無い真っ青な空で、コンディションは最高でした。
§.地球スイングバイ時の撮影計画
打上げ時の撮影には失敗したので、その一年後の地球スイングバイは絶対に撮影したいと思っていました。そして2015年10月に JAXA から 12月3日にスイングバイを実施すると発表がありました。奇しくも打上げの丁度一年後に当たります。ただし JAXA から公開されたスイングバイ時の 「はやぶさ2」 の位置予報は当然と言えば当然ですが 地心赤道直交座標系での表示でした。このままではどこに見えるのかすら見当がつきません。仕方なく、面倒だなぁと思いつつも JAXA の予報値を観測地での赤経赤緯に変換するプログラムを作りました。その結果は以下のようになりました。
打上げ時の撮影には失敗したので、その一年後の地球スイングバイは絶対に撮影したいと思っていました。そして2015年10月に JAXA から 12月3日にスイングバイを実施すると発表がありました。奇しくも打上げの丁度一年後に当たります。ただし JAXA から公開されたスイングバイ時の 「はやぶさ2」 の位置予報は当然と言えば当然ですが 地心赤道直交座標系での表示でした。このままではどこに見えるのかすら見当がつきません。仕方なく、面倒だなぁと思いつつも JAXA の予報値を観測地での赤経赤緯に変換するプログラムを作りました。その結果は以下のようになりました。
天文薄明終了のころ、りゅう座の頭付近に見え始め、北極星を掠めて、カペラの近くで地球の影に入って見えなくなります。JAXAによると最大で10等星ぐらいの明るさになるとのことなので撮影できる可能性は十分にあります。
§.予報位置が間違っている?
自分の計算した位置が間違っていたら困るので、念の為に 『はやぶさ2・観測キャンペーン』 のまとめ役をしている日本惑星協会に依頼して、忍野村での予報を出してもらいました。ところが両者の予報値の間には 40~50秒ぐらいの通過時刻の差がありました。飛行コースはほぼ同じなので私が計算に使っている恒星時の算出方法のミスだろうと思い、プログラムを見直しましたが間違いなさそうです。でも日本惑星協会に対して 『間違っているよ!』 と言うほどの自信はありません。仕方なく、面倒でも 両方の通過時刻をカバーするような撮影計画を立てました。
そうこうしている内に、「ステラナビゲーター9」 でも予報が計算できるようになりました。早速予報を計算すると、私の計算値とは計算誤差の範囲で一致しました。俄然 勇気が湧いてきて 日本惑星協会に 「協会の予報値とステラナビゲータの予報値に40~50秒の差がある」 と報告しました。惑星協会に調べてもらったところ、原因はJAXAのデータにあるようでした。つまりJAXAが公開している予報値(X,Y,Z座標値)は、スイングバイの為の軌道修正前のデータだそうで、ステラナビも私もそのデータを使っている訳です。ところが惑星協会は特別に軌道修正後のデータの提供を受けて、それを使っていることが原因でした。JAXAのホームページには 「軌道変更しても予報値の更新は行わない」という旨の注記がありましたが、(差が大きいためか)急遽 軌道修正後のデータを公開してくれることになりました。
11月末には NASA のHPでも予報計算ができるよになり、最終的には、惑星協会、ステラナビ、NASA、私の4個の予報値が得られましたが、4個とも計算誤差の範囲で一致しました。 ( 「日本惑星協会」様、お世話になり、ありがとうございました。)
§.いざ、出陣!
当日(3日)の午前中は雨が降ったり止んだりという天気でしたが、GPVの快晴予報を信じて15時に今にも降り出しそうな曇天の秦野を出発しました。目的地の山梨県忍野村までは約100分のドライブですが途中の静岡県小山町もベタ曇りなので心配が過ぎります。でも篭坂峠を越えると急激に晴れて来て、日没と同時に到着した時には快晴になりました。
§.スイングバイ撮影開始
天文薄明の終了が 18h02m なので、18h00m から撮影を開始しました。もちろん本命の時刻は「はやぶさ2」 が最も明るくなる 18h56m~57m ごろなので、まだまだ時間的な余裕があります。
この時間帯(18h00mごろ)は、「はやぶさ2」 は15等星よりも 暗い(?)と思われるので、撮った画像は暗い高速小惑星と同じようにメトカーフ加算合成をするつもりです。2秒露出で連写をしましたが、既に写野外に出たと思われるので、次の写野(18h10mの位置)へ筒先を振りました。時間的には全く余裕があり 『この調子なら もっと時間を詰めて沢山のポイントを撮れたかなあ』 などと考えながら、ワクワクする気分を楽しみました。更に 18h17m のポイント、18h25m のポイント、18h34m のポイントと撮影は順調に進みました。次は北極星を掠めるポイントですが、思ったよりスムーズに北極星が導入できたので、時間的に余裕が出来ました。そこで予備として準備していた 200mm望遠レンズ+EOSKissX3 も北極に向けてシャッターを切りました。
次は 51m30s のポイントですが、子午線を越えたためか赤経赤緯を目的値に合わせても赤経で 1m ほどズレていました。慌てて位置を修正しましたが、撮影時刻にギリギリ間に合う慌て様になってしまいました。
§.痛恨の失敗!
最後の撮影は本命でもある 18h56m のポイントです。明るい星の少ない場所なので、赤経赤緯を合わせても正確に導入出来たかどうか分かりません。星図と照合するのですが、先ほどの 18h51m のポイントで慌てた余韻が残っているのか 気ばかりが焦って ズレ量を過修正してしまったり、赤経微動と赤緯微動のボタンを押し間違えたり、全く初心者のようなミスで ようやく目的の写野が導入できたのは通過予定時刻の10秒後でした。 初めに導入した写野のままであっても画面の端の方を通過したはずなので、なおさら悔やまれます。千載一遇のチャンスを逃し、自己嫌悪でしばらくは地面に座り込んでしまいました。
§.撮影できた 『はやぶさ2』
まず、撮影を開始した 18h01m のポイントでは 「はやぶさ2」 はまだまだ暗すぎて、23枚をメトカーフ加算合成しても全く何も写っていませんでした。しかし 次の 18h10m のポイントでは下のように辛うじて写りました。恒星と重なりそうな位置なので、根気よく探さないと見落としてしまいそうです。我田引水になりますが、こんなに早い時刻での撮影成功例は天文台を除けば少ないと思います。
§.予報位置が間違っている?
自分の計算した位置が間違っていたら困るので、念の為に 『はやぶさ2・観測キャンペーン』 のまとめ役をしている日本惑星協会に依頼して、忍野村での予報を出してもらいました。ところが両者の予報値の間には 40~50秒ぐらいの通過時刻の差がありました。飛行コースはほぼ同じなので私が計算に使っている恒星時の算出方法のミスだろうと思い、プログラムを見直しましたが間違いなさそうです。でも日本惑星協会に対して 『間違っているよ!』 と言うほどの自信はありません。仕方なく、面倒でも 両方の通過時刻をカバーするような撮影計画を立てました。
そうこうしている内に、「ステラナビゲーター9」 でも予報が計算できるようになりました。早速予報を計算すると、私の計算値とは計算誤差の範囲で一致しました。俄然 勇気が湧いてきて 日本惑星協会に 「協会の予報値とステラナビゲータの予報値に40~50秒の差がある」 と報告しました。惑星協会に調べてもらったところ、原因はJAXAのデータにあるようでした。つまりJAXAが公開している予報値(X,Y,Z座標値)は、スイングバイの為の軌道修正前のデータだそうで、ステラナビも私もそのデータを使っている訳です。ところが惑星協会は特別に軌道修正後のデータの提供を受けて、それを使っていることが原因でした。JAXAのホームページには 「軌道変更しても予報値の更新は行わない」という旨の注記がありましたが、(差が大きいためか)急遽 軌道修正後のデータを公開してくれることになりました。
11月末には NASA のHPでも予報計算ができるよになり、最終的には、惑星協会、ステラナビ、NASA、私の4個の予報値が得られましたが、4個とも計算誤差の範囲で一致しました。 ( 「日本惑星協会」様、お世話になり、ありがとうございました。)
§.いざ、出陣!
当日(3日)の午前中は雨が降ったり止んだりという天気でしたが、GPVの快晴予報を信じて15時に今にも降り出しそうな曇天の秦野を出発しました。目的地の山梨県忍野村までは約100分のドライブですが途中の静岡県小山町もベタ曇りなので心配が過ぎります。でも篭坂峠を越えると急激に晴れて来て、日没と同時に到着した時には快晴になりました。
§.スイングバイ撮影開始
天文薄明の終了が 18h02m なので、18h00m から撮影を開始しました。もちろん本命の時刻は「はやぶさ2」 が最も明るくなる 18h56m~57m ごろなので、まだまだ時間的な余裕があります。
この時間帯(18h00mごろ)は、「はやぶさ2」 は15等星よりも 暗い(?)と思われるので、撮った画像は暗い高速小惑星と同じようにメトカーフ加算合成をするつもりです。2秒露出で連写をしましたが、既に写野外に出たと思われるので、次の写野(18h10mの位置)へ筒先を振りました。時間的には全く余裕があり 『この調子なら もっと時間を詰めて沢山のポイントを撮れたかなあ』 などと考えながら、ワクワクする気分を楽しみました。更に 18h17m のポイント、18h25m のポイント、18h34m のポイントと撮影は順調に進みました。次は北極星を掠めるポイントですが、思ったよりスムーズに北極星が導入できたので、時間的に余裕が出来ました。そこで予備として準備していた 200mm望遠レンズ+EOSKissX3 も北極に向けてシャッターを切りました。
次は 51m30s のポイントですが、子午線を越えたためか赤経赤緯を目的値に合わせても赤経で 1m ほどズレていました。慌てて位置を修正しましたが、撮影時刻にギリギリ間に合う慌て様になってしまいました。
§.痛恨の失敗!
最後の撮影は本命でもある 18h56m のポイントです。明るい星の少ない場所なので、赤経赤緯を合わせても正確に導入出来たかどうか分かりません。星図と照合するのですが、先ほどの 18h51m のポイントで慌てた余韻が残っているのか 気ばかりが焦って ズレ量を過修正してしまったり、赤経微動と赤緯微動のボタンを押し間違えたり、全く初心者のようなミスで ようやく目的の写野が導入できたのは通過予定時刻の10秒後でした。 初めに導入した写野のままであっても画面の端の方を通過したはずなので、なおさら悔やまれます。千載一遇のチャンスを逃し、自己嫌悪でしばらくは地面に座り込んでしまいました。
§.撮影できた 『はやぶさ2』
まず、撮影を開始した 18h01m のポイントでは 「はやぶさ2」 はまだまだ暗すぎて、23枚をメトカーフ加算合成しても全く何も写っていませんでした。しかし 次の 18h10m のポイントでは下のように辛うじて写りました。恒星と重なりそうな位置なので、根気よく探さないと見落としてしまいそうです。我田引水になりますが、こんなに早い時刻での撮影成功例は天文台を除けば少ないと思います。
北極星通過時のポイントでも確かに写ってはいるのですが、メトカーフ加算合成が上手く出来ず画像になりません。
18h51m30s のポイント(下の画像)では 「はやぶさ2」 も明るくなって来たので飛跡を直接比較明合成できました。ただし ISO51200 なので画像はザラザラですが、私としては満足の一枚です。
18h51m30s のポイント(下の画像)では 「はやぶさ2」 も明るくなって来たので飛跡を直接比較明合成できました。ただし ISO51200 なので画像はザラザラですが、私としては満足の一枚です。
追記:北極星付近を通過中の画像が処理できたので追加します。
はやぶさ2 の帰還! 2020年12月5日
§.はじめに
2014年12月3日に打ち上げられた 『はやぶさ2』 は 小惑星リュウグウの探査を無事に終えて6年振りに帰ってきました。そして 2020年12月5日 14時30分に リターンカプセルを分離した後、本体は地球との衝突を避けるように軌道修正をして次の目的地(小惑星1998KY26) に向けて飛び去って行きました。リターンカプセルは無事に回収され、中には想定以上の量の砂/小石が入っていて、ミッションは大成功でした。
しかし、私の最大の関心は 飛び去って行く 『はやぶさ2』 を私のカメラで撮影することであり、何年も前から この帰還のタイミングを心待ちにしていました。
§.小惑星 『りゅうぐう』 の撮影
はやぶさ2の帰還の日(12月5日)には 探査目的地だった小惑星 「りゅうぐう」 も撮影して 『はやぶさ2』 の帰還に花を添えようと思っていました。しかし、12月5日が悪天候で撮影できないという事態もあり得るので、事前にも撮影しておくことにしました。(※ 実際、12月5日は悪天候のため 「りゅうぐう」 は撮影できなかった。)
妻の介護があるので遠征は出来ませんが、10月20日は快晴で透明度も良かったので自宅から撮影することにしました。「りゅうぐう」 は 月没の約1時間後の 20h43m に南中して高度は86.3゜に達するという絶好の条件でした。予報光度は 16.8 等星と暗いですが、ほぼ天頂で撮影できるので自宅からでも写せる自信はありました。 ⇒⇒⇒ 左画像
撮影成功に気を良くして、更にもう一枚と思って 11月14日にも撮影しました。 ⇒⇒ 右画像
2014年12月3日に打ち上げられた 『はやぶさ2』 は 小惑星リュウグウの探査を無事に終えて6年振りに帰ってきました。そして 2020年12月5日 14時30分に リターンカプセルを分離した後、本体は地球との衝突を避けるように軌道修正をして次の目的地(小惑星1998KY26) に向けて飛び去って行きました。リターンカプセルは無事に回収され、中には想定以上の量の砂/小石が入っていて、ミッションは大成功でした。
しかし、私の最大の関心は 飛び去って行く 『はやぶさ2』 を私のカメラで撮影することであり、何年も前から この帰還のタイミングを心待ちにしていました。
§.小惑星 『りゅうぐう』 の撮影
はやぶさ2の帰還の日(12月5日)には 探査目的地だった小惑星 「りゅうぐう」 も撮影して 『はやぶさ2』 の帰還に花を添えようと思っていました。しかし、12月5日が悪天候で撮影できないという事態もあり得るので、事前にも撮影しておくことにしました。(※ 実際、12月5日は悪天候のため 「りゅうぐう」 は撮影できなかった。)
妻の介護があるので遠征は出来ませんが、10月20日は快晴で透明度も良かったので自宅から撮影することにしました。「りゅうぐう」 は 月没の約1時間後の 20h43m に南中して高度は86.3゜に達するという絶好の条件でした。予報光度は 16.8 等星と暗いですが、ほぼ天頂で撮影できるので自宅からでも写せる自信はありました。 ⇒⇒⇒ 左画像
撮影成功に気を良くして、更にもう一枚と思って 11月14日にも撮影しました。 ⇒⇒ 右画像
§.はやぶさ2 の予報位置
「りゅうぐう」 も撮影できて、あとは 『はやぶさ2』 の帰還を待つばかりです。2015年12月3日の地球スイングバイの時には JAXA から 『はやぶさ2』 の予報位置が公開されてステラナビゲータでも表示することができましたが、今回は 11月25日までの位置が公表されただけで、肝心のその先がわかりません。もしかしたら、地球離脱のための軌道変更を行った後で その結果を反映して公開されるのか??そうだとすると、公開されるのは 12月5日の17時過ぎになってしまうのではないか? 間に合うのか!?
心配になって、スイングバイ時にお世話になった 日本惑星協会の HP を見てみると 【はやぶさ2 おかえり!2020 共同観測キャンペーン】 が実施されていました。このキャンペーンに 11月20日までに参加登録すると観測地別の予報値を提供してもらえるようでした。もちろん迷うことなく参加登録しました。
§.大誤算
私は今回はどうしても忍野村へ遠征したかったので 一ヶ月前から家内と相談して、一泊だけショートステイで面倒見てくれる所を探して予約しておりました。ところが 11月29日に私が転倒してテーブルの角で背中を強打してしまいました。肋骨が4ヶ所で折れていて肺に小さな穴が開き血と空気が溜まっていました。医者からは 「もう少しずれていたら死んでいたかも。全治4ヶ月は覚悟すること。」 と言われてしまい、入院はせず自宅安静・通院となりました。でもこの状態では妻の介護は無理なので自宅で看取ることは諦めてホスピスに入所させることにしました。・・・・・ちょっと脱線してきたので章を改めます。
「りゅうぐう」 も撮影できて、あとは 『はやぶさ2』 の帰還を待つばかりです。2015年12月3日の地球スイングバイの時には JAXA から 『はやぶさ2』 の予報位置が公開されてステラナビゲータでも表示することができましたが、今回は 11月25日までの位置が公表されただけで、肝心のその先がわかりません。もしかしたら、地球離脱のための軌道変更を行った後で その結果を反映して公開されるのか??そうだとすると、公開されるのは 12月5日の17時過ぎになってしまうのではないか? 間に合うのか!?
心配になって、スイングバイ時にお世話になった 日本惑星協会の HP を見てみると 【はやぶさ2 おかえり!2020 共同観測キャンペーン】 が実施されていました。このキャンペーンに 11月20日までに参加登録すると観測地別の予報値を提供してもらえるようでした。もちろん迷うことなく参加登録しました。
§.大誤算
私は今回はどうしても忍野村へ遠征したかったので 一ヶ月前から家内と相談して、一泊だけショートステイで面倒見てくれる所を探して予約しておりました。ところが 11月29日に私が転倒してテーブルの角で背中を強打してしまいました。肋骨が4ヶ所で折れていて肺に小さな穴が開き血と空気が溜まっていました。医者からは 「もう少しずれていたら死んでいたかも。全治4ヶ月は覚悟すること。」 と言われてしまい、入院はせず自宅安静・通院となりました。でもこの状態では妻の介護は無理なので自宅で看取ることは諦めてホスピスに入所させることにしました。・・・・・ちょっと脱線してきたので章を改めます。
§.撮影準備
ホスピス入所の手続き等に忙殺されている中、11月30日の午後に 日本惑星協会 から はやぶさ2 の予報位置が届きました。1分毎の赤経・赤緯情報があり、 距離情報はなかったので はやぶさ2の光度は計算できませんが、6日02時前ごろに 10~12等星ぐらいで見えそうです。右図は地平座標で表示した 『はやぶさ2』 の飛行径路です。(星は 01h30m の位置) 遠征撮影は出来ないものの、やはりどうしても撮影したいので 息子に頼み込んで自宅前に望遠鏡を組み立ててもらうことにしました。あとは撮影用に星図を作らないといけません。痛み止め薬の副作用の眠気で頭がボーッとしつつ、酷い吐き気を我慢しながら 00h30m , 01h00m , 10m , 20m , 30m , 40m , 45m , 50m , 55m , 57m の位置の星図を作りました。これで事前準備は完了です! §.当日の様子 SCW天気予報では、昼間は小雨がぱらつくものの急速に回復して日没後は快晴見込みとなっていました。しかし実際には回復が遅れていて 天文薄明終了の 18h01m になっても、月の出の 20h42m になってもベタ曇りのままです。21時を過ぎるころになって、ようやくチラホラと雲間が見え始め、21h30m には北天は晴れ渡りました。次男に望遠鏡の設置を始めるように頼んで、あれこれと指示しながら空を気にしていましたが、22時過ぎには快晴になりました。しかし同時に霧が出て来てライトで照らすと光の筋の中は細かい水滴が漂い雨が降っているような感じです。(もちろん降ってはいませんが。) |
風が全く無いので霧は流れて行かず、折角の快晴なのにギブアップか(?)との思いが過ぎります。22h30m ごろにやっと望遠鏡の設置が完了しました。私なら 20分ぐらいで設置できるのに、次男は初めてなので 1時間以上かかりましたが、このためだけにわざわざ川崎から来てくれた次男には感謝、感謝。
§.撮影結果
私の機材&光害地という条件では 暗い移動天体(推定14~15等星)の光跡を線状に写すのは無理です。当然 撮影前から、 メトカーフ加算合成を実施して表示する計画を立てていました。そして、以下の写真が それぞれのポイントでメトカーフ加算合成を行った結果です。
私の機材&光害地という条件では 暗い移動天体(推定14~15等星)の光跡を線状に写すのは無理です。当然 撮影前から、 メトカーフ加算合成を実施して表示する計画を立てていました。そして、以下の写真が それぞれのポイントでメトカーフ加算合成を行った結果です。
ここまではメトカーフ加算合成で処理しないと 『はやぶさ2』 は見えませんでしたが、01h50m ごろには10~12等星ぐらいまで明るくなって来たので、一コマ毎に直接光跡が確認できるようになって来ました。
以下には同じデータからメトカーフ加算合成した画像 (左) と比較明合成で処理をして『はやぶさ2』の光跡が分かるようにした画像(右) を掲示しました。
以下には同じデータからメトカーフ加算合成した画像 (左) と比較明合成で処理をして『はやぶさ2』の光跡が分かるようにした画像(右) を掲示しました。
§.まとめ
骨折の痛みを我慢して撮影した結果、00h29m に初めて 『はやぶさ2』 の姿を捕え、それ以降は計画通りに撮影することができました。忍野村遠征を諦めて自宅での撮影でしたが、忍野村へ遠征した仲間は 霧のために撮影できなかったそうで、まさしく 怪我の功名 でした。これで私の 『はやぶさ2』 の追いかけ行為も、ひとまず終了ですが、『はやぶさ2』 は次のミッションの途中で、2027年12月 及び 2028年6月に 地球スイングバイを実施します。もしもその時に まだ元気だったら また撮影したいものです。