みちびき (2010-045A) 2011.07.09
2010年9月11日に準天頂衛星初号機 「みちびき」 が H-IIAロケットによって打ち上げられ、9月27日に日本上空を通る中心経度約135度の最終軌道(準天頂軌道)に投入されました。準天頂軌道の人工衛星は非常に珍しく、私の撮影意欲を強く刺激しました。日本の静止衛星は10等星ぐらいで見えるから、それらと似通ったサイズの 「みちびき」 も見えるはずです。静止衛星との違いは、少しだけ遠くにあり 非常にゆっくりと移動して行くということでしょうか、でもそれが撮影の妨げになるとは思えません。
§.どこに見えるのか?
私は人工衛星の位置予報には 『Orbitron』 というフリーソフトを使っています。このソフトはNORAD が提供するTLE(軌道要素)を CelesTrak のサイトから自動的にダウンロードして予報を計算するソフトです。その CelesTrak には人工衛星が色々なグループに分類されていて軌道要素が公開されています。 (例えば、『Weather』、『Molniya』、『Earth Resources』 など。)その分類の中の一つに 『Last 30 Days' Launches 』 という分類があり、一ヶ月以内に打ち上げられた衛星の軌道要素はここから入手出来ます。「みちびき」 もまずここに掲載されました。でもまだ暫定軌道だったので様子をみておりましたが、9月末に最終軌道に乗ったので、いざ撮影と思い予報を計算しました。しかし計算を間違えたのかどうか、日本上空に来るのは昼間という結果でした。
二週間ぐらい放っておいて、もう一度計算をしてみようとしたら、打ち上げから 30日以上経過したので軌道要素が消えていました。慌てて別の分類の中を調べましたが、どこにも分類されておらず、軌道要素の入手は出来ませんでした。仕方がないので別のサイト(SpaceTrak) に会員登録をして、そこからも全衛星のTLE を自動入手してライブラリーに追加するようにソフトの設定を変更しました。 この変更が大失敗の素であったことは後日判明するのですが、取りあえず 「みちびき」 の軌道要素が入手出来て予報計算が出来るようになりました。
§.一回目の撮影に挑戦
11月4日、計算をしてみたら、18h22m01s に白鳥座の右翼付近にあることが分かりました。予報位置の星図をこれもフリーのソフトである 『Stellarium』 で作成して、望遠鏡(SE250N)をセットして待ち構えました。予報時刻に誤差があるといけないので、通過の1分前から露出20秒で連続撮影を行いましたが、恒星の点像は写っているものの線を引いた像は全く何も写りませんでした。恒星像からみて撮影した場所は間違いなく予報位置だったので、通過時刻が狂ったのか、予報自体が間違っていたのか、それとも 「みちびき」 は想像以上に暗いのか、判断に困りました。今回は恒星追尾を行いながら撮影したので 「みちびき」 は自分の移動量に加え追尾による移動量もあったので暗くって写らなかったのかも知れないと思い、次回は固定撮影を併用することにしました。
§.更なる撮影に挑戦
11月9日(月齢3)に再挑戦しました。今度は予報位置に望遠鏡を向けて恒星追尾をしながら、やはり通過の1分前から連続撮影をしましたが、通過時刻丁度にモータードライブを止めて固定撮影に切り替えました。これなら20秒分の恒星の軌跡と共に略写野中央に短い 「みちびき」 の軌跡が写るはずです。しかし残念ながら今回も全く何も写りませんでした。 ???
12月27日、2011年1月27日にも挑戦しましたが、惨敗でした。どうして写らないのか分からず、打上げから4カ月以上も経過したので新鮮味も薄れ、なかば諦めました。
「みちびき」 のことを忘れかけていた今年の6月に 『6月22日から実用運用に入る』 との発表がJAXA からありました。またまた挑戦意欲が湧いてきて、実用運用に入るのなら軌道修正も完了しているだろうと思い 6月21日に再度撮影を試みました。あまり空の透明度が良くなかった夜だった為か、今回も何も写りませんでした。めげずに 6/28 にも挑戦しましたが、やはり駄目でした。
§.失敗の原因
6回も挑戦して全戦全敗! もう諦めようと思いましたが、未練たらしく最後の挑戦ということで『Orbitron』 で予報位置の計算を行いました。その時、何となく軌道が西にずれているような気がしたので、念の為に手動で強制的に軌道要素の更新を行いました。ところが 『SpaceTrak』 からの更新は時間切れで更新されませんでした。でも 『Orbitron』 は何もなかったかのように古い軌道要素を使って計算結果を出しました。なぜ時間切れになってしまったのか、逐次調べていくと 『SpaceTrak』 へアクセスする際に 『Orbitron』 が送る私のパスワードの一部の大文字が小文字になっていることが分かりました。そのためにアクセスが出来ず時間切れとなったようです。ということは、自動で軌道要素の更新が行われていると信じていたのに、PWミスで更新されないまま予報計算をしていたということです。 なんたる不覚! これではいくら撮影しても写らないのは当たり前です。 イリジウム衛星や ISS、HST などは SpaceTrak からではなく CelesTrakから入手した軌道要素を使っていたので、こちらは問題なく自動更新されておりました。このことも気が付くのが遅れてしまった原因の一つです。自動更新されているとの思い込みが敗因でした。
§.出直し再挑戦
2011年7月9日は晴れたので、新しい軌道要素を使って予報を出しました。
通過時刻 ……21h 18m 01s (JST) α=16h 22m 14s δ=+35°26’ 20”
22h 01m 06s (JST) α=17h 07m 09s δ=+38°54’ 15”
もちろん任意の時刻の予報が出せますが、他の撮影や雲の通過などのことを考えて、時間を開けて準備しました。この予報のうち、21h18m の方は雲があったのでパスして、22h01m の方を撮影しました。
下の写真は 「みちびき」 を恒星追尾をしながら20秒露出で撮影した2コマを比較明合成したものです。「みちびき」 自身の動きと追尾による移動分が加算されているので 「みちびき」 のみかけの移動は大きく、下の固定撮影より写り難いです。
§.どこに見えるのか?
私は人工衛星の位置予報には 『Orbitron』 というフリーソフトを使っています。このソフトはNORAD が提供するTLE(軌道要素)を CelesTrak のサイトから自動的にダウンロードして予報を計算するソフトです。その CelesTrak には人工衛星が色々なグループに分類されていて軌道要素が公開されています。 (例えば、『Weather』、『Molniya』、『Earth Resources』 など。)その分類の中の一つに 『Last 30 Days' Launches 』 という分類があり、一ヶ月以内に打ち上げられた衛星の軌道要素はここから入手出来ます。「みちびき」 もまずここに掲載されました。でもまだ暫定軌道だったので様子をみておりましたが、9月末に最終軌道に乗ったので、いざ撮影と思い予報を計算しました。しかし計算を間違えたのかどうか、日本上空に来るのは昼間という結果でした。
二週間ぐらい放っておいて、もう一度計算をしてみようとしたら、打ち上げから 30日以上経過したので軌道要素が消えていました。慌てて別の分類の中を調べましたが、どこにも分類されておらず、軌道要素の入手は出来ませんでした。仕方がないので別のサイト(SpaceTrak) に会員登録をして、そこからも全衛星のTLE を自動入手してライブラリーに追加するようにソフトの設定を変更しました。 この変更が大失敗の素であったことは後日判明するのですが、取りあえず 「みちびき」 の軌道要素が入手出来て予報計算が出来るようになりました。
§.一回目の撮影に挑戦
11月4日、計算をしてみたら、18h22m01s に白鳥座の右翼付近にあることが分かりました。予報位置の星図をこれもフリーのソフトである 『Stellarium』 で作成して、望遠鏡(SE250N)をセットして待ち構えました。予報時刻に誤差があるといけないので、通過の1分前から露出20秒で連続撮影を行いましたが、恒星の点像は写っているものの線を引いた像は全く何も写りませんでした。恒星像からみて撮影した場所は間違いなく予報位置だったので、通過時刻が狂ったのか、予報自体が間違っていたのか、それとも 「みちびき」 は想像以上に暗いのか、判断に困りました。今回は恒星追尾を行いながら撮影したので 「みちびき」 は自分の移動量に加え追尾による移動量もあったので暗くって写らなかったのかも知れないと思い、次回は固定撮影を併用することにしました。
§.更なる撮影に挑戦
11月9日(月齢3)に再挑戦しました。今度は予報位置に望遠鏡を向けて恒星追尾をしながら、やはり通過の1分前から連続撮影をしましたが、通過時刻丁度にモータードライブを止めて固定撮影に切り替えました。これなら20秒分の恒星の軌跡と共に略写野中央に短い 「みちびき」 の軌跡が写るはずです。しかし残念ながら今回も全く何も写りませんでした。 ???
12月27日、2011年1月27日にも挑戦しましたが、惨敗でした。どうして写らないのか分からず、打上げから4カ月以上も経過したので新鮮味も薄れ、なかば諦めました。
「みちびき」 のことを忘れかけていた今年の6月に 『6月22日から実用運用に入る』 との発表がJAXA からありました。またまた挑戦意欲が湧いてきて、実用運用に入るのなら軌道修正も完了しているだろうと思い 6月21日に再度撮影を試みました。あまり空の透明度が良くなかった夜だった為か、今回も何も写りませんでした。めげずに 6/28 にも挑戦しましたが、やはり駄目でした。
§.失敗の原因
6回も挑戦して全戦全敗! もう諦めようと思いましたが、未練たらしく最後の挑戦ということで『Orbitron』 で予報位置の計算を行いました。その時、何となく軌道が西にずれているような気がしたので、念の為に手動で強制的に軌道要素の更新を行いました。ところが 『SpaceTrak』 からの更新は時間切れで更新されませんでした。でも 『Orbitron』 は何もなかったかのように古い軌道要素を使って計算結果を出しました。なぜ時間切れになってしまったのか、逐次調べていくと 『SpaceTrak』 へアクセスする際に 『Orbitron』 が送る私のパスワードの一部の大文字が小文字になっていることが分かりました。そのためにアクセスが出来ず時間切れとなったようです。ということは、自動で軌道要素の更新が行われていると信じていたのに、PWミスで更新されないまま予報計算をしていたということです。 なんたる不覚! これではいくら撮影しても写らないのは当たり前です。 イリジウム衛星や ISS、HST などは SpaceTrak からではなく CelesTrakから入手した軌道要素を使っていたので、こちらは問題なく自動更新されておりました。このことも気が付くのが遅れてしまった原因の一つです。自動更新されているとの思い込みが敗因でした。
§.出直し再挑戦
2011年7月9日は晴れたので、新しい軌道要素を使って予報を出しました。
通過時刻 ……21h 18m 01s (JST) α=16h 22m 14s δ=+35°26’ 20”
22h 01m 06s (JST) α=17h 07m 09s δ=+38°54’ 15”
もちろん任意の時刻の予報が出せますが、他の撮影や雲の通過などのことを考えて、時間を開けて準備しました。この予報のうち、21h18m の方は雲があったのでパスして、22h01m の方を撮影しました。
下の写真は 「みちびき」 を恒星追尾をしながら20秒露出で撮影した2コマを比較明合成したものです。「みちびき」 自身の動きと追尾による移動分が加算されているので 「みちびき」 のみかけの移動は大きく、下の固定撮影より写り難いです。
2011年7月9日 ①22h00m17s~37s ②22h00m45s~01m05s みちびきは右下から左上方向に移動
下の写真は恒星追尾を止めていわゆる固定撮影したものです。これも20秒露出の2コマを比較明合成しているので、恒星の軌跡は20秒分 + 20秒分です。「みちびき」 の軌跡の方が恒星より短いということは、「みちびき」は恒星の日周運動より遅いスピードで移動しているということです。
2011年7月9日 ①22h01m10s~30s ②01m36s~56s みちびきは右下から左上方向に移動、恒星は左から右方向に移動