オリオン宇宙船を撮影したい
§.はじめに
アルテミス1計画(無人オリオン宇宙船で月周回、その後地球へ帰還・回収)の実行が 2020年6月に中断・延期されて以降 やっと具体化して来て、私の知る限りでは 2021年11月26日に打ち上げられる予定になりました。しかしながら、SLSロケットのトラブルで 2022年3月12日に延期され、更に 8/29 → 9/4→ 9/28 →10/2 → 11/14 と延期が続きましたが、遂に 11月16日 に打ち上げられました。
月へ向かうオリオン宇宙船を撮影したかったので、打上げ予定日が発表される度に 予報位置を計算し星図にプロットして待機していました。
アルテミス1計画(無人オリオン宇宙船で月周回、その後地球へ帰還・回収)の実行が 2020年6月に中断・延期されて以降 やっと具体化して来て、私の知る限りでは 2021年11月26日に打ち上げられる予定になりました。しかしながら、SLSロケットのトラブルで 2022年3月12日に延期され、更に 8/29 → 9/4→ 9/28 →10/2 → 11/14 と延期が続きましたが、遂に 11月16日 に打ち上げられました。
月へ向かうオリオン宇宙船を撮影したかったので、打上げ予定日が発表される度に 予報位置を計算し星図にプロットして待機していました。
§.致命的な 43分の遅れ
打上げ直後のオリオン宇宙船は見えませんが、約12時間後からは日本から見える位置に来ます。しかし計画より 43分遅れて打ち上げられたということは、図1左上の予報経路を43分遅れて通過するというような単純なことではありません。その43分間にも地球は自転しているので見える位置は西へ動いて行きます。ずれる量は宇宙船までの距離に拠りますが、距離は11~12万kmなので、精々0.5°
~0.8゚ ぐらいでしょう。しかし当然ながら計画軌道から微妙に修正された軌道に打ち上げられたはずなので、西へ 0.5~0.8゚ずらしただけでは済まないと思います。いずれにせよ、位置が不確かな12等級の衛星を撮影するのは非常に困難です。私の能力ではほぼ不可能でしょう。
仕方がないので、NASAが新しい軌道要素を入力して予報が計算できるようになるのを待つしかないでしょね。幸い、日本上空通過まであと11時間あるので、それまでにNASAが入力することを祈ることにしました。
打上げ直後のオリオン宇宙船は見えませんが、約12時間後からは日本から見える位置に来ます。しかし計画より 43分遅れて打ち上げられたということは、図1左上の予報経路を43分遅れて通過するというような単純なことではありません。その43分間にも地球は自転しているので見える位置は西へ動いて行きます。ずれる量は宇宙船までの距離に拠りますが、距離は11~12万kmなので、精々0.5°
~0.8゚ ぐらいでしょう。しかし当然ながら計画軌道から微妙に修正された軌道に打ち上げられたはずなので、西へ 0.5~0.8゚ずらしただけでは済まないと思います。いずれにせよ、位置が不確かな12等級の衛星を撮影するのは非常に困難です。私の能力ではほぼ不可能でしょう。
仕方がないので、NASAが新しい軌道要素を入力して予報が計算できるようになるのを待つしかないでしょね。幸い、日本上空通過まであと11時間あるので、それまでにNASAが入力することを祈ることにしました。
§.実際の撮影
祈りも空しく通過時刻までにNASAのサイトが更新されることはありませんでした。それでも一縷の望みを託して 03h38m から まず古い予報位置を撮影しました。そして43分後に 0.8゚西にズレた場所(図1の青◎印)を撮影しました。そしてそれを時間経過毎に数回繰り返しました。
結局、何も写らず無駄な努力に終わってしまいました。翌日 NASAのサイトが更新されたので17日の予報位置を計算し直してみると、図1 右下の赤★印の位置を通過して行ったようです。あともう少し南側を撮影していたなら捕らえることが出来たかも知れません。残念!
祈りも空しく通過時刻までにNASAのサイトが更新されることはありませんでした。それでも一縷の望みを託して 03h38m から まず古い予報位置を撮影しました。そして43分後に 0.8゚西にズレた場所(図1の青◎印)を撮影しました。そしてそれを時間経過毎に数回繰り返しました。
結局、何も写らず無駄な努力に終わってしまいました。翌日 NASAのサイトが更新されたので17日の予報位置を計算し直してみると、図1 右下の赤★印の位置を通過して行ったようです。あともう少し南側を撮影していたなら捕らえることが出来たかも知れません。残念!
§.SLSの第2段目(ICPS) ……(1)
ところでオリオン宇宙船を打ち上げたSLSロケットの第2段目(=ICPS) はどうなったのでしょうか? NASA のサイトではロケットの残骸までは登録されていないようで、予報位置を得ることは出来ませんでした。しかし翌日に下記の軌道要素(TLE)が公開されました。
ところでオリオン宇宙船を打ち上げたSLSロケットの第2段目(=ICPS) はどうなったのでしょうか? NASA のサイトではロケットの残骸までは登録されていないようで、予報位置を得ることは出来ませんでした。しかし翌日に下記の軌道要素(TLE)が公開されました。
SLS R/B
1 54258U 22156B 22320.38000000 -.00015394 00000-0 00000-0 0 9993 2 54258 30.5010 10.5910 9639665 20.8820 1.0790 0.10372534 41 |
このTLEから分かることは、TLEは 11月16日18h07m12s JST 時点のもので、近地点 517km、遠地点369413km、周期 9日15h22m49s という長楕円軌道ということです。ただ解せないのは 打上げからたった 2時間20分後の軌道要素のくせに 4周目であることを示していることです。赤字の 4 のところは 0 であるべきです。このTLE、信用できるのか、少し疑問が残ります。
取り合えずこのTLEで 17日の 03時~05時 ごろの位置を計算してみると、ICPS はオリオン宇宙船の予報位置よりも 約 1.5°南を通過して行ったようで、その辺りは撮影範囲外でした。
このTLEを信じると、次に近地点付近に戻って来るのは 11月26日 11時ごろで、昼間です。さらにその次の近地点付近通過は 12月5日07時ごろで日の出後です。じゃあ 3回目の近地点付近通過はどうかと言うと 12月15日 22時ごろになり、これはバッチリ見えそうです。15日までには TLE も更新されて精度の良い予報が出せそうです。
取り合えずこのTLEで 17日の 03時~05時 ごろの位置を計算してみると、ICPS はオリオン宇宙船の予報位置よりも 約 1.5°南を通過して行ったようで、その辺りは撮影範囲外でした。
このTLEを信じると、次に近地点付近に戻って来るのは 11月26日 11時ごろで、昼間です。さらにその次の近地点付近通過は 12月5日07時ごろで日の出後です。じゃあ 3回目の近地点付近通過はどうかと言うと 12月15日 22時ごろになり、これはバッチリ見えそうです。15日までには TLE も更新されて精度の良い予報が出せそうです。
§.月を周回中のオリオン宇宙船
私の推定では 月を周回中のオリオン宇宙船の明るさは 15~16等級だと思うので位置さえ分かれば撮影できそうです。しかし今回は 11月24日が新月だったので、その前後の数日は月が低空すぎるために、その近傍の16等星の撮影は無理です。天気も悪かったりして、撮影できそうになったのは12月に入ってからでした。NASA のサイトで予報位置を計算してみると、いつもは光度の予報値は n.a
なのに今回は 12/1=17.4等、12/2=16.8等、12/3=16.3等、12/4=15.7等と予報されていました。12月4日に撮影しようと考えていましたが、4日には長男の家族が遊びに来たので孫と遊ぶことを優先してしまいました。
翌日の5日には月軌道を離脱するスイングバイ&噴射が予定されているので、それを撮影しようと思いましたが、このイベントは月の裏側で行われるので見えませんでした。この軌道変更は計画通りに行われ、12月12日の未明に地球に帰還(着水)することになりました。
私の推定では 月を周回中のオリオン宇宙船の明るさは 15~16等級だと思うので位置さえ分かれば撮影できそうです。しかし今回は 11月24日が新月だったので、その前後の数日は月が低空すぎるために、その近傍の16等星の撮影は無理です。天気も悪かったりして、撮影できそうになったのは12月に入ってからでした。NASA のサイトで予報位置を計算してみると、いつもは光度の予報値は n.a
なのに今回は 12/1=17.4等、12/2=16.8等、12/3=16.3等、12/4=15.7等と予報されていました。12月4日に撮影しようと考えていましたが、4日には長男の家族が遊びに来たので孫と遊ぶことを優先してしまいました。
翌日の5日には月軌道を離脱するスイングバイ&噴射が予定されているので、それを撮影しようと思いましたが、このイベントは月の裏側で行われるので見えませんでした。この軌道変更は計画通りに行われ、12月12日の未明に地球に帰還(着水)することになりました。
§.地球に帰還するオリオン宇宙船
帰還のための軌道変更を反映したNASAのサイトが公開されたのは 12月8日でした。この最新の軌道要素で予報を計算すると、日本からは11日夕刻~24時まで 12等→10等級(※)で見えます。これがラストチャンスです。ところが天気予報は非情にも 『11日夕方から深夜までは曇り、12日未明から晴れる』 となっています。天気の回復が 1~2時間 早まれば撮影できそうですが、そんなことに賭けるわけにもいかず、一日前に撮影することにしました。10日の予報光度は 14.0等級ですが仕方ないですね。
(※) 私の推定値、NASAは n.a
帰還のための軌道変更を反映したNASAのサイトが公開されたのは 12月8日でした。この最新の軌道要素で予報を計算すると、日本からは11日夕刻~24時まで 12等→10等級(※)で見えます。これがラストチャンスです。ところが天気予報は非情にも 『11日夕方から深夜までは曇り、12日未明から晴れる』 となっています。天気の回復が 1~2時間 早まれば撮影できそうですが、そんなことに賭けるわけにもいかず、一日前に撮影することにしました。10日の予報光度は 14.0等級ですが仕方ないですね。
(※) 私の推定値、NASAは n.a
12月10日18h35m01s~40m03s JST SS15s×17コマを合成 SN250N直焦(コマコレ) LPS-P2 EOS-RP ISO3200 Mag=13.9等 @秦野市東田原
下の画像は、途切れ途切れですが 18h35m~20h08m の 93分間のオリオン宇宙船の軌跡です。
§.SLSの第2段目(ICPS) ……(2)
オリオン宇宙船本体はしっかりと撮影できましたが、ICPSはどうなったのでしょう。実はいつまで待っていても TLE が更新されず、とうとう12月15日になってしまいました。一か月も前の古いTLE で計算すると、22h47mごろしし座を 6~7等級で通過するという結果でした。精度が悪いので、撮影範囲を広く取り 通過時刻にも幅を取る必要がありそうです。実際には予報時刻の 1時間前から f50mm とf70mm の2台のカメラで撮影しました。しかし残念ながら予報時刻までには写りませんでした。また予報時刻後も撮影を続けるつもりでしたが、雲が出てきたので止むを得ず中止しました。結局は写らなかったので多分 ICPS は行方不明になってしまうでしょう。
オリオン宇宙船本体はしっかりと撮影できましたが、ICPSはどうなったのでしょう。実はいつまで待っていても TLE が更新されず、とうとう12月15日になってしまいました。一か月も前の古いTLE で計算すると、22h47mごろしし座を 6~7等級で通過するという結果でした。精度が悪いので、撮影範囲を広く取り 通過時刻にも幅を取る必要がありそうです。実際には予報時刻の 1時間前から f50mm とf70mm の2台のカメラで撮影しました。しかし残念ながら予報時刻までには写りませんでした。また予報時刻後も撮影を続けるつもりでしたが、雲が出てきたので止むを得ず中止しました。結局は写らなかったので多分 ICPS は行方不明になってしまうでしょう。
§.まとめ
紆余曲折ありましたが、オリオン宇宙船が撮影できることが証明できて良かったです。今後のアルテミス計画も ぜひ撮影したいものです。 (2023.01.02 記)
紆余曲折ありましたが、オリオン宇宙船が撮影できることが証明できて良かったです。今後のアルテミス計画も ぜひ撮影したいものです。 (2023.01.02 記)