スターリンク・フレア 2024.02.11
§.はじめに
宵の西天低空、未明の東天低空でスターリンク衛星がフレアを起こすという記事が星ナビ3月号に出ていました。星ナビはボイコット中なのですが大変興味深かったので涙を吞んで購入しました。そして実際に撮影してみたら、確かにフレアを起こすスターリンク衛星が写りました。明るいものではマイナス1~2等級もあり、肉眼で見ていても良く見えました。双眼鏡だと2等級の衛星も見えて、面白い光景でした。
どういう原理で このようなフレア現象が起こるのか、なぜ太陽の真上方向に見えるのか、なぜ出現時刻が薄明時ではなく宵と未明なのか、など色々と疑問が涌き頭の中がぐちゃぐちゃになり気持ちが悪いので、私なりに考察してみることにしました。
§.まずは撮影した画像
下の画像は 2月11日の未明に自宅から東天低空を撮影したものです。星は約34分間の日周運動の光跡を残して昇って来ていますが、その間に約50個ほどの人工衛星の光跡が入り乱れて写っています。東には山と言うか小高い丘があり 8゚~ 9゚より下は見えません。
明るいフレアは もっと低空に多いようなので、この次は海岸沿いまで出かけようと思います。
宵の西天低空、未明の東天低空でスターリンク衛星がフレアを起こすという記事が星ナビ3月号に出ていました。星ナビはボイコット中なのですが大変興味深かったので涙を吞んで購入しました。そして実際に撮影してみたら、確かにフレアを起こすスターリンク衛星が写りました。明るいものではマイナス1~2等級もあり、肉眼で見ていても良く見えました。双眼鏡だと2等級の衛星も見えて、面白い光景でした。
どういう原理で このようなフレア現象が起こるのか、なぜ太陽の真上方向に見えるのか、なぜ出現時刻が薄明時ではなく宵と未明なのか、など色々と疑問が涌き頭の中がぐちゃぐちゃになり気持ちが悪いので、私なりに考察してみることにしました。
§.まずは撮影した画像
下の画像は 2月11日の未明に自宅から東天低空を撮影したものです。星は約34分間の日周運動の光跡を残して昇って来ていますが、その間に約50個ほどの人工衛星の光跡が入り乱れて写っています。東には山と言うか小高い丘があり 8゚~ 9゚より下は見えません。
明るいフレアは もっと低空に多いようなので、この次は海岸沿いまで出かけようと思います。
ここで言いたいことは、衛星の 腹面(下の面)及び太陽電池パネルの裏面 は常に地球重心方向を向いている、言い換えれば地面に平行になる姿勢で飛んでいるということです。以後は この『腹面 及び 太陽電池パネル裏面』を 反射面 と記述します。
§.平面1、2、3を考える
いま下図のように人工衛星が A1 → A2 → A3 と飛行しているとします。点Sは太陽、点Oは観測者として、A1 , S , O の3点を含む平面を平面1とします。
同じように、A3 , S , O の3点を含む面を平面3とします。
いま下図のように人工衛星が A1 → A2 → A3 と飛行しているとします。点Sは太陽、点Oは観測者として、A1 , S , O の3点を含む平面を平面1とします。
同じように、A3 , S , O の3点を含む面を平面3とします。
§.平面2でフレアが起こる条件
この画面を平面2として、少し書き加えてみます。
薄青い円は地球断面(半径r)とし、破線の円は衛星の軌道が含まれる球体の断面です。
右上の図に於いて、太陽Sから衛星A2 に入る光の入射角はβであり 反射して出て行く角度はαです。だから β=α なら反射光は点Oに届いてフレアを起こすはずです。
この β=α がフレアが見られる条件です。
三角形GA2O、三角形GA2P において内角の和は 180゚だから
α = 90°- s - h ----- ①
β = 90°- ω + s ----- ②
α=β の時は ① , ② より以下が成り立ちます。
90°- s - h = 90°- ω + s
∴ 2s + h - ω = 0 ------ ③
一方、三角形GA2O で 第2余弦定理より
d^2 = r^2 + (r+H)^2 -2*r*(r+H)*cos(s) ----- ④
更に、点Gを原点にした Q-Z座標系で 点A2 の座標値 (q , z) は 破線の円上にあるから
q^2 + z^2 = (r+H)^2 ------------ ⑤
一方、直線OA2 の長さ d を使えば
q = d*cos(h) , z = d*sin(h) + r ----------- ⑥
⑥を⑤に代入して h について整理すれば
sin(h) = (H^2 + 2*r*H - d^2)/(2*r*d) ------- ⑦
この β=α がフレアが見られる条件です。
三角形GA2O、三角形GA2P において内角の和は 180゚だから
α = 90°- s - h ----- ①
β = 90°- ω + s ----- ②
α=β の時は ① , ② より以下が成り立ちます。
90°- s - h = 90°- ω + s
∴ 2s + h - ω = 0 ------ ③
一方、三角形GA2O で 第2余弦定理より
d^2 = r^2 + (r+H)^2 -2*r*(r+H)*cos(s) ----- ④
更に、点Gを原点にした Q-Z座標系で 点A2 の座標値 (q , z) は 破線の円上にあるから
q^2 + z^2 = (r+H)^2 ------------ ⑤
一方、直線OA2 の長さ d を使えば
q = d*cos(h) , z = d*sin(h) + r ----------- ⑥
⑥を⑤に代入して h について整理すれば
sin(h) = (H^2 + 2*r*H - d^2)/(2*r*d) ------- ⑦
地平座標による太陽高度(ω) と 衛星の高度(h) が計算できたので
それをグラフ表示したのが下図です。ただし、スターリンク衛星の
地上高(H) は 540km~560km ぐらいなので、下図はH=560km(赤)の場合のグラフです。(H=400km(青)、H=500km(黄) は参考用)
H=560km のグラフからフレアの起こる場所は、例えば太陽高度が -41゚になる時刻には 地上高 8゚であることが分かります。2月11日の太陽高度-41゚は、ステラナビゲータで調べれば、秦野では 03h15m JST です。ついでにその時の太陽の方位はステラナビゲータで 北から77.6゚東だと分かります。これでフレアの発生する場所の 方位、高度、時刻 の情報が全て揃いました。
星ナビの記事では 太陽高度が -35゚~ -45゚の範囲でフレアが発生するとなっているので、この赤グラフのゾーン(-40゚~ -46゚)とは若干の差があります。これは多分、星ナビでは H=560km の衛星だけではなく、例えば H=400km~560km ほどの衛星のフレアを考慮した範囲を採用しているのだと思います。因みに 青色の H=400km の衛星のグラフでは太陽高度の範囲は -34゚~ -39゚がフレア発生場所となります。
それをグラフ表示したのが下図です。ただし、スターリンク衛星の
地上高(H) は 540km~560km ぐらいなので、下図はH=560km(赤)の場合のグラフです。(H=400km(青)、H=500km(黄) は参考用)
H=560km のグラフからフレアの起こる場所は、例えば太陽高度が -41゚になる時刻には 地上高 8゚であることが分かります。2月11日の太陽高度-41゚は、ステラナビゲータで調べれば、秦野では 03h15m JST です。ついでにその時の太陽の方位はステラナビゲータで 北から77.6゚東だと分かります。これでフレアの発生する場所の 方位、高度、時刻 の情報が全て揃いました。
星ナビの記事では 太陽高度が -35゚~ -45゚の範囲でフレアが発生するとなっているので、この赤グラフのゾーン(-40゚~ -46゚)とは若干の差があります。これは多分、星ナビでは H=560km の衛星だけではなく、例えば H=400km~560km ほどの衛星のフレアを考慮した範囲を採用しているのだと思います。因みに 青色の H=400km の衛星のグラフでは太陽高度の範囲は -34゚~ -39゚がフレア発生場所となります。
§.まとめ
フレア現象の原理が理解できたので、スッキリしました。この一連の解説の中で観測者の緯度経度は使用されていないので、得られた結果(=グラフ)は 他地域でもそのまま適用できると思います。
この現象はスターリンク衛星が打ち上げられる前からあったけれどもフレア発生ゾーンを通過する衛星が少なくて目立たなかったのだと思います。スターリンク衛星が大量に打ち上げられたので目立って来たのでしょうね。
いずれにせよ、スターリンク・フレアは夏以外は毎晩々々、宵と未明の2回発生しているので一度は見ても損にはなりませんよ。
(2024.02.16 記)
フレア現象の原理が理解できたので、スッキリしました。この一連の解説の中で観測者の緯度経度は使用されていないので、得られた結果(=グラフ)は 他地域でもそのまま適用できると思います。
この現象はスターリンク衛星が打ち上げられる前からあったけれどもフレア発生ゾーンを通過する衛星が少なくて目立たなかったのだと思います。スターリンク衛星が大量に打ち上げられたので目立って来たのでしょうね。
いずれにせよ、スターリンク・フレアは夏以外は毎晩々々、宵と未明の2回発生しているので一度は見ても損にはなりませんよ。
(2024.02.16 記)