中国の宇宙ステーション・モジュール「天和」
§.はじめに
4月29日12時23分に中国の宇宙ステーション (以後CSSと略す) の中核モジュール「天和」が打ち上げられました。そしてその「天和」が打上後に初めて日本上空を通過するタイミングで撮影することが出来たのでアップします。
なお「天和」を私はどうしてもテンホーと読んでしまいますが、中国のニュース等を聞いていると ”チャンフー” と聞こえます。(笑)
§.中国の宇宙ステーション計画の概要
中国の計画についてはご存知の方もいると思いますが、概略を紹介します。今後 変更があるかも知れませんが、現時点での計画は以下です。
4月29日12時23分に中国の宇宙ステーション (以後CSSと略す) の中核モジュール「天和」が打ち上げられました。そしてその「天和」が打上後に初めて日本上空を通過するタイミングで撮影することが出来たのでアップします。
なお「天和」を私はどうしてもテンホーと読んでしまいますが、中国のニュース等を聞いていると ”チャンフー” と聞こえます。(笑)
§.中国の宇宙ステーション計画の概要
中国の計画についてはご存知の方もいると思いますが、概略を紹介します。今後 変更があるかも知れませんが、現時点での計画は以下です。
名称 | 打上げ予定日 | 概略サイズ(m) | 仕様 |
---|---|---|---|
天和 | 2021.04.29 | 16.6×φ4.2 , 22.5ton | 中心となるモジュール |
天舟2号 | 2021.05.20 | 10.6×φ3.4 , 13.0ton | 貨物補給船 |
神舟12号 | 2021.06.10 | 9.25×φ3.4 , 8.1ton | 有人宇宙船 |
天舟3号 | 2021.09.30 | 10.6×φ3.4 , 13.0ton | 貨物補給船 |
神舟13号 | 2021.10.-- | 9.25×φ3.4 , 8.1ton | 有人宇宙船 |
天舟4号 | 2022.03.04 | 10.6×φ3.4 , 13.0ton | 貨物補給船 |
問天 | 2022.05.06 | ? | 実験モジュール |
神舟14号 | 2022.05.-- | 9.25×φ3.4 , 8.1ton | 有人宇宙船 |
梦天 | 2022.08.09 | ? | 実験モジュール |
天舟5号 | 2022.10.-- | 10.6×φ3.4 , 13.0ton | 貨物補給船 |
神舟15号 | 2022.11.-- | 9.25×φ3.4 , 8.1ton | 有人宇宙船 |
*XXXXXXX | *XXXXXXXXXX | *XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXX3 | *XXXXXXXXXXXXX4 |
§.天和が見える可能性は?
2月ごろに CSS を構成するメインモジュール「天和」が4月に打ち上げられることを知りました。もしも天宮1号や2号と同じような軌道に打ち上げられるなら、打上後 約9周半で日本上空を通過するはずです。打上時刻次第では見えるかも知れません。
3月になって、打上げ予定時刻が公開されて 4月29日 12時18分だと分かりました。一周は約92分ぐらいだから 9.5周は 874分(=14時間34分)。つまり12h18m+14h34mは 30日の未明 2h52m ごろになり、十分に見えるはずです。
これで見える可能性があることが分かったので、あとは見える時刻と方向をどのように推定するかですが、打上げから14時間以上の余裕があるので、その間に軌道要素(TLE)が公開されるでしょう。そのTLEを入手して計算すればいい!と楽観的に考えていました。
§.TLE が公開されない?
4月29日 12時23分に予定より5分遅れて「天和」が打ち上げられました。しかし夜の20時になっても CelesTrak にも Space-Track にも Heavens-Above にもTLEが公開されません。イライラしながらチェックしていましたが、30日の1時になっても公開されません。
天気も 2時以降は快晴の予報ですが、1時の時点ではべた曇りです。この状況では諦めざるを得ないかなぁと思いつつ、Space-Track のサイトを開きました。やはり未だ 2021-033A までしか公開されていません。ふと次の 2021-034A のTLEを要求してみると「Not found」と表示されるかと思いきや、TLEが表示されました。表示されたことに驚きつつも、軌道傾斜角を見ると 97.7°の極軌道要素なので天和のTLEではありません。さらに 2021-035A を要求してみると 軌道傾斜角41.47°のTLEが表示されました。これだ!!
§.予報位置の計算
さっそく予報位置を計算すると、03h11m48s にベガとアルタイルの中間点付近(H=74°)で影から出現するようです。因みに明日の予報も計算すると、結果は「落下」。?? そんな馬鹿な(?)と思い、TLEをよくみてみると空気抵抗に関するB*抗力項の値が大き過ぎ
ます。通常の1000倍以上も大きいのでTLE公開時の入力ミスだと思い、その値をゼロにした予報も計算しました。経路は大きくは変わらないのですが、通過時刻が75秒ほど早くなりました。ということで結局は B*値をゼロにした予報位置を撮影して、もし予報通り出現しなかったら75秒以上連写を続けることにしました。
§.実際の撮影
SCW天気予報は2時以降は快晴というが、低気圧に伴う寒冷前線の通過が遅れているのか2時半になってやっと西空に雲間が見えて来ました。雲の移動は北西から南東に向けて激しく、天和通過の20分前には天頂から西側は晴れ間が多くなって来ました。しかし激しく動いている雲の更に上には逆に東から西に向かう動きのゆったりとした薄い雲があり晴れ間の透明度はよくありません。天和通過の10分前には幸運にも写したい方向に隙間が見えて来て 5分前には隙間は広がって来ました。
3時10分に f=20mm の広角レンズで連写を開始しました。もう一台のカメラは f=70mmでピント合わせた状態で待機していました。B*値をゼロにした予報時刻になっても何も見えません。そのまま連写を続けているとTLE通りの予報時刻に「天和」が スーーッと影から出現して明るくなって来ました。ああ、予報通りだったと安心しながら、70mmのカメラを「天和」に向けてセットして、これも
連写を始めました。「天和」はベガよりも明るかったので -1~0等星だったと見積りました。明るさとISSよりも早い移動速度から、間違いなく「天和」であると確信しつつ直前に出来た雲の隙間に感謝しました。
§.まとめ
CSSの最初のモジュール「天和」を日本からは最も早いタイミング(*) で撮影できて
うれしいです。(*打上げから 約9.7周後)
また直前まで雲が邪魔でしたが、撮影時刻ちょうどには隙間が出来ました。そして撮影終了の20分後には全天べた曇りになり、計画していた他の対象は撮影出来ませんでした。本当に奇跡のような隙間でした。
このあと続々と関連衛星が打ち上げられる計画なので、人工衛星オタクには堪らない年になりそうです。 (2021.05.03 記)
2月ごろに CSS を構成するメインモジュール「天和」が4月に打ち上げられることを知りました。もしも天宮1号や2号と同じような軌道に打ち上げられるなら、打上後 約9周半で日本上空を通過するはずです。打上時刻次第では見えるかも知れません。
3月になって、打上げ予定時刻が公開されて 4月29日 12時18分だと分かりました。一周は約92分ぐらいだから 9.5周は 874分(=14時間34分)。つまり12h18m+14h34mは 30日の未明 2h52m ごろになり、十分に見えるはずです。
これで見える可能性があることが分かったので、あとは見える時刻と方向をどのように推定するかですが、打上げから14時間以上の余裕があるので、その間に軌道要素(TLE)が公開されるでしょう。そのTLEを入手して計算すればいい!と楽観的に考えていました。
§.TLE が公開されない?
4月29日 12時23分に予定より5分遅れて「天和」が打ち上げられました。しかし夜の20時になっても CelesTrak にも Space-Track にも Heavens-Above にもTLEが公開されません。イライラしながらチェックしていましたが、30日の1時になっても公開されません。
天気も 2時以降は快晴の予報ですが、1時の時点ではべた曇りです。この状況では諦めざるを得ないかなぁと思いつつ、Space-Track のサイトを開きました。やはり未だ 2021-033A までしか公開されていません。ふと次の 2021-034A のTLEを要求してみると「Not found」と表示されるかと思いきや、TLEが表示されました。表示されたことに驚きつつも、軌道傾斜角を見ると 97.7°の極軌道要素なので天和のTLEではありません。さらに 2021-035A を要求してみると 軌道傾斜角41.47°のTLEが表示されました。これだ!!
§.予報位置の計算
さっそく予報位置を計算すると、03h11m48s にベガとアルタイルの中間点付近(H=74°)で影から出現するようです。因みに明日の予報も計算すると、結果は「落下」。?? そんな馬鹿な(?)と思い、TLEをよくみてみると空気抵抗に関するB*抗力項の値が大き過ぎ
ます。通常の1000倍以上も大きいのでTLE公開時の入力ミスだと思い、その値をゼロにした予報も計算しました。経路は大きくは変わらないのですが、通過時刻が75秒ほど早くなりました。ということで結局は B*値をゼロにした予報位置を撮影して、もし予報通り出現しなかったら75秒以上連写を続けることにしました。
§.実際の撮影
SCW天気予報は2時以降は快晴というが、低気圧に伴う寒冷前線の通過が遅れているのか2時半になってやっと西空に雲間が見えて来ました。雲の移動は北西から南東に向けて激しく、天和通過の20分前には天頂から西側は晴れ間が多くなって来ました。しかし激しく動いている雲の更に上には逆に東から西に向かう動きのゆったりとした薄い雲があり晴れ間の透明度はよくありません。天和通過の10分前には幸運にも写したい方向に隙間が見えて来て 5分前には隙間は広がって来ました。
3時10分に f=20mm の広角レンズで連写を開始しました。もう一台のカメラは f=70mmでピント合わせた状態で待機していました。B*値をゼロにした予報時刻になっても何も見えません。そのまま連写を続けているとTLE通りの予報時刻に「天和」が スーーッと影から出現して明るくなって来ました。ああ、予報通りだったと安心しながら、70mmのカメラを「天和」に向けてセットして、これも
連写を始めました。「天和」はベガよりも明るかったので -1~0等星だったと見積りました。明るさとISSよりも早い移動速度から、間違いなく「天和」であると確信しつつ直前に出来た雲の隙間に感謝しました。
§.まとめ
CSSの最初のモジュール「天和」を日本からは最も早いタイミング(*) で撮影できて
うれしいです。(*打上げから 約9.7周後)
また直前まで雲が邪魔でしたが、撮影時刻ちょうどには隙間が出来ました。そして撮影終了の20分後には全天べた曇りになり、計画していた他の対象は撮影出来ませんでした。本当に奇跡のような隙間でした。
このあと続々と関連衛星が打ち上げられる計画なので、人工衛星オタクには堪らない年になりそうです。 (2021.05.03 記)